技能実習制度の最新動向と法改正ポイント

はじめに

外国人技能実習制度は、日本の産業界にとって重要な労働力の一端を担う制度として、多くの企業で活用されています。しかし近年、この制度の在り方について社会的関心が高まり、制度の見直しが進められています。ここでは、制度の最新動向と企業が押さえておくべき法改正のポイントをわかりやすく整理します。


1. 技能実習制度の背景と目的

技能実習制度は1993年に創設され、「開発途上国への技能移転」を目的としてスタートしました。制度上は“人材育成”が中心ですが、実際には労働力確保の一手段としても活用されています。このギャップが近年、制度の見直し議論を呼ぶ背景となっています。


2. 現在の制度の課題点

以下のような問題が指摘されています:

  • 実習生に対する人権侵害や劣悪な労働環境
  • 実質的に「安価な労働力」として使われること
  • 監理団体の質のバラつき

こうした課題により、日本国内外から制度の透明性と公正性が求められるようになりました。


3. 最新動向:新制度への移行議論

2023年末、法務省を中心に有識者会議がまとめた報告書により、現行の技能実習制度は廃止・再構築される方向で議論が進んでいます。主なポイントは以下の通りです:

新制度の主な特徴(図解:変更点比較)

項目現行:技能実習制度新制度(案):育成就労制度
目的技能の移転・国際貢献人材育成・雇用の安定
雇用形態実習契約雇用契約
職場変更原則不可一定条件下で可能
在留期間最長5年(段階あり)最長5年(柔軟な運用)

新制度は、2027年をめどに導入予定とされています(2025年現在)。


4. 企業が押さえるべき法改正のポイント

制度改正に伴い、以下のような対応が求められます:

  • 就労契約の明確化:人材育成が目的であることを明記し、適正な雇用管理を行う
  • 実習生のキャリアパス設計:将来の特定技能への移行も見据えた設計を
  • 労働環境の整備:労働基準法に則った環境整備とコンプライアンスの強化
  • 教育体制の強化:日本語教育や文化理解研修など、企業としての支援体制が求められる

実践事例:ABC製造株式会社の場合

愛知県に本社を構えるABC製造株式会社では、実習生向けに以下の取り組みを導入しています:

  • 就業前オリエンテーションに通訳者を配置
  • 月1回のフィードバック面談を実施
  • 日本語学習支援に加え、地域交流イベントも開催 結果として、定着率が90%以上を維持し、地域との連携も強化されました。

5. 今後に向けて

企業にとって外国人実習生は、単なる労働力ではなく「ともに働く仲間」です。制度が変わる今こそ、企業自身も在り方を見直し、持続可能な人材活用のモデルを築くチャンスです。

新制度への移行に際しては、行政や監理団体と密に連携し、情報を早めにキャッチすることが重要です。柔軟に対応しつつ、実習生にとっても企業にとっても実りある制度運用を目指しましょう。