はじめに
近年、日本の中小企業を中心に外国人技能実習生の受け入れが広がっています。労働力不足を背景に注目されるこの制度ですが、実習生側から見た「魅力的な会社」とはどのようなものなのでしょうか? 本稿では、技能実習生の視点に立って、どのような職場環境や取り組みが評価されているのかを探ります。また、実際の声や事例を交えながら、企業が取るべき具体的なアクションについても考察します。
1. 技能実習生が企業に求めるもの
1-1. 明確なキャリアビジョン
多くの技能実習生は、将来的に母国での就業や起業を視野に入れ、日本での経験を「スキルアップの場」として捉えています。そのため、実習内容が単純作業に偏らず、実践的な技能や専門知識を習得できる職場は高く評価されます。
実習生の声:「母国に帰ったあと、家族のために自分の店を開きたい。そのために日本で学べる技術や知識はとても重要です。」(ベトナム出身・食品加工)
1-2. 安心できる労働環境
適正な労働時間、残業の管理、休日の確保、安全衛生への配慮など、日本人労働者と変わらない基準での雇用管理が求められています。特に近年はSNSなどを通じて情報が共有されるため、ブラック企業の噂はすぐに広まります。
実習生の声:「同じ国の仲間から“この会社は残業が多い”と聞くと、行くのが不安になります。」(ミャンマー出身・建設業)
1-3. コミュニケーションとサポート体制
言語の壁や生活習慣の違いに対応するため、日本語学習の支援や、相談できる窓口、通訳の配置などが整備されている企業は、実習生にとって安心感があります。また、職場内の雰囲気がフレンドリーであることも重視されます。
実習生の声:「社長や先輩たちがやさしく話しかけてくれるので、毎日が楽しいです。」(インドネシア出身・縫製業)
2. 魅力的とされる企業の取り組み事例
2-1. 教育制度の充実(A社:食品加工業)
山梨県にあるA社では、入社後3カ月間にわたって、日本語教育・技能訓練・生活ガイダンスをセットで実施。実習生一人ひとりに担当指導員をつけ、個別面談を月1回実施しています。
結果:離職率が5%以下、技能検定の合格率が98%以上と高水準。
2-2. 社内イベントと地域交流(B社:建設業)
福岡県のB社では、社員旅行、スポーツ大会、地元の祭りへの参加などを通じて、実習生が地域に溶け込めるよう支援。地域の日本語ボランティアとの連携も強化しています。
実習生の声:「地元の人とも友達になれて、日本での生活がすごく楽しいです。」
2-3. キャリア支援と技能移行(C社:金属加工業)
埼玉県のC社では、実習生の特定技能資格取得を支援し、希望者には引き続き雇用を提供。試験対策講座を社内で開講し、実習終了後のキャリアパスを提示しています。
成果:技能実習から特定技能への移行率が60%以上。
3. 企業側のメリットと成功のカギ
魅力的な企業として評価されることで、
- 優秀な実習生の確保
- 高い定着率
- 実習生からの良い口コミ(紹介採用) といったメリットが生まれます。
逆に、「実習生から選ばれない企業」は、慢性的な人材不足や早期離職に悩まされることになりかねません。だからこそ、魅力ある職場づくりは中長期的な投資と捉えるべきです。
4. 今後に向けた提言
制度の見直しが進む中で、今後は「人材育成」としての観点が一層強く求められるようになります。以下のようなポイントを意識することで、企業としての魅力をさらに高めることができます:
- 実習生との対話の機会を増やす(定期的なアンケートや面談)
- 現場社員の異文化理解研修の導入
- 福利厚生の拡充(住居支援、交通費補助、健康診断など)
- 社内報やSNSでの実習生紹介や功績の発信
おわりに
外国人技能実習生は、単なる“労働力”ではなく、企業の未来をともに支える“仲間”です。彼らの目線に立ち、安心して働ける環境を整えることが、結果として企業自身の成長と信頼に繋がります。