技能実習生の問題点とトラブル事例

技能実習制度は、日本企業が発展途上国の人材を受け入れ、技術を教えることで国際貢献を果たすことを目的としています。しかし、適切な管理ができていない企業では、さまざまなトラブルが発生しやすく、最悪の場合は企業の信用を失うことにもつながります

本コラムでは、技能実習生の受け入れに伴う代表的な6つの問題点と、それらを未然に防ぐための対策について解説します。

1. 賃金の問題:最低賃金以下の支払い・不当な控除

❌ よくある問題

最低賃金を下回る給与を支払う(違法)
時間外労働の割増賃金を適切に支払わない
寮費や光熱費を相場以上に控除し、実質の給与を大幅に下げる

技能実習生の給与は、日本人労働者と同じく最低賃金を遵守する必要があり、労働時間に応じた割増賃金の支払いも義務です。不適切な給与管理は、行政指導や企業の信用失墜につながります。

✅ 企業が取るべき対策

最低賃金や労働基準法を守る(毎年の最低賃金改定に注意)
控除額を適正にし、事前に書面で合意を取る
給与明細を発行し、技能実習生が内容を理解できるよう説明する


2. 長時間労働:労働時間超過・過労トラブル

❌ よくある問題

人手不足を理由に長時間労働を強要する
残業代が未払い
過労による健康問題・精神的ストレスの増加

技能実習生も日本の労働基準法の適用を受け、1日8時間・週40時間を超える労働には割増賃金が必要です。過度な長時間労働は、健康問題を引き起こし、離職や失踪の原因となることもあります。

✅ 企業が取るべき対策

適切な労働時間管理を行い、無理な残業をさせない
時間外労働の割増賃金を適正に支払う
技能実習生の健康状態を定期的にチェックする


3. 失踪トラブル:なぜ技能実習生は逃げるのか?

❌ よくある問題

賃金未払い・低賃金で生活が苦しい
過度な労働時間・パワハラ・暴言による精神的ストレス
知人の紹介で不法就労へと流れるケース

失踪は、企業と技能実習生の信頼関係が崩れた結果として発生することが多いです。また、SNSなどを通じて他の実習生から「もっと良い条件の仕事がある」と誘われ、不法就労へと向かうケースも増えています。

✅ 企業が取るべき対策

適正な給与・労働環境を整え、不満が溜まらないようにする
技能実習生と定期的に面談を行い、悩みや不安を聞く
監理団体と連携し、問題が起こる前に対処する


4. 生活におけるトラブル:文化の違い・孤独・金銭問題

❌ よくある問題

日本の生活習慣やマナーを理解していない(ゴミの出し方・騒音問題など)
日本語が不十分で、職場や地域とのコミュニケーションが難しい
詐欺被害・悪徳商法に巻き込まれる

技能実習生は母国と違う環境で生活するため、生活面でのサポートが不足するとトラブルが起きやすくなります。

✅ 企業が取るべき対策

来日直後に日本の生活ルールを丁寧に説明する
地域住民との関係構築をサポートし、孤立しない環境を作る
銀行口座の開設方法や金銭管理についてアドバイスする


5. パワハラやセクハラ:職場環境の問題

❌ よくある問題

上司や同僚からの暴言・差別的発言
過度な叱責や威圧的な指導
セクハラ・プライバシーの侵害

技能実習生は立場が弱いため、ハラスメントを受けても訴えられないケースが多いのが実情です。しかし、ハラスメントが発覚すると、企業の信用が失墜し、行政指導や監理団体からの厳しい対応を受ける可能性があります。

✅ 企業が取るべき対策

ハラスメント防止研修を実施し、従業員の意識を高める
匿名で相談できる窓口を設置する
問題が発覚した場合、速やかに対処し、再発防止策を講じる


6. 事件や事故の発生トラブル

❌ よくある問題

技能実習生が事故に遭い、適切な対応ができなかった
実習先での作業中にケガを負い、労災申請が適正に行われなかった
実習生が法律違反(飲酒運転・窃盗など)を起こした

技能実習生が関与する事件や事故は、企業の対応次第で大きな問題に発展する可能性があります。特に労災事故は、適切な対応を怠ると企業の責任が問われることもあります。

✅ 企業が取るべき対策

作業中の安全管理を徹底し、事故防止に努める
労災が発生した場合は速やかに報告・対応する
技能実習生にも日本の法律を理解させ、違反しないよう指導する


7. まとめ:問題を未然に防ぐために

💡 企業が取り組むべきポイント
適正な賃金・労働環境の整備
技能実習生との定期的なコミュニケーション
ハラスメント防止・安全管理の徹底
文化や言語の違いを理解し、適切な生活支援を行う

技能実習生のトラブルは、企業の管理次第で防ぐことができます。受け入れ企業として、「働きやすい環境づくり」を意識し、問題の発生を未然に防ぎましょう!