技能実習生の給料について②

日本の企業が外国人技能実習生を受け入れる際、最も重要なポイントの一つが「給与管理」です。適正な給与を支払うことは、技能実習制度の信頼性を維持し、企業の健全な発展にもつながります。本コラムでは、技能実習生の給与に関する基本情報、日本人との給与差、給与相場、適切な支払い方法について詳しく解説します。

1. 日本人との給与差はあるのか?

技能実習生の給与に関して、よくある疑問の一つが「日本人労働者と比べて給与の差があるのか?」という点です。

① 法律上の原則

日本の労働基準法では、国籍を理由に給与に差をつけることは禁止されています。つまり、同じ仕事をする限り、日本人と技能実習生の基本給は同等であるべきです。

② 現実的な違い

実際には、日本人と技能実習生の給与に差が生じるケースもあります。その理由として、以下のような点が挙げられます。

  • 未経験からのスタート:技能実習生は日本の企業文化や技術に慣れる期間が必要なため、スタート時点の給与が低めになることがある。
  • 残業の有無:技能実習生の労働時間が厳密に管理されるため、日本人労働者のように柔軟に残業ができないことがある。
  • 手当や昇給制度の違い:日本人には特定の手当(例えば勤続年数手当や資格手当)が支給されることが多いが、技能実習生には適用されない場合がある。

ただし、最低賃金を下回る給与を設定することは法律違反であり、企業として絶対に避けなければなりません。


2. 外国人技能実習生の給料相場は?

技能実習生の給与相場は、地域や業種によって異なりますが、一般的な基準は以下のようになります。

① 基本給の相場

技能実習生の基本給は、最低賃金以上である必要があります。2024年時点では、最低賃金が都道府県ごとに1,000円前後となっており、月収に換算すると16万~20万円程度が一般的な給与水準です(週40時間労働の場合)。

② 残業代の支給

時間外労働が発生した場合は、割増賃金を支払う必要があります。

  • 時間外労働(週40時間超過分):25%以上の割増
  • 深夜労働(22時~翌5時):25%以上の割増
  • 休日労働(法定休日):35%以上の割増

例えば、通常の時給が1,000円の技能実習生が残業した場合、残業時間の時給は1,250円以上となります。

③ 控除後の手取り額

技能実習生も日本の法律に基づき、社会保険や税金が控除されます。控除額の目安は以下の通りです。

項目控除額の目安(月額)
健康保険料8,000~12,000円
厚生年金保険料15,000~20,000円
雇用保険料1,000~2,000円
所得税2,000~5,000円
住民税(2年目以降)5,000~10,000円

これらの控除を差し引いた手取り額は、約12万~16万円程度になることが多いです。


3. 技能実習生への給与の支払い方法

給与の支払い方法についても、適切な管理が求められます。技能実習生に適正な支払いを行うため、以下のポイントを押さえておきましょう。

① 支払い方法の原則

労働基準法により、給与は以下の4つの原則に従って支払う必要があります。

  1. 通貨払い:現金または銀行振込で支払う(原則として手渡しの現金支給は避ける)。
  2. 直接払い:本人に直接支払う(代理人への支払いは禁止)。
  3. 全額払い:違法な天引きをせず、給与の全額を支払う。
  4. 定期払い:毎月1回以上、決まった日に支払う。

② 銀行振込が基本

近年、給与の支払いは銀行振込が主流です。技能実習生も日本国内で銀行口座を開設することができるため、企業側は指定された口座に給与を振り込むのが望ましいです。

💡 実習生向けの銀行口座開設のポイント

  • 在留カードやパスポートを持参すれば、都市銀行・地方銀行・ゆうちょ銀行などで口座開設可能。
  • 口座開設の際、企業がサポートするとスムーズ。
  • 受け入れ初期には現金手渡しも可能だが、できるだけ早く銀行振込に切り替えるべき。

③ 給与明細の発行

給与を支払う際には、給与明細を発行し、内容を明確に伝えることが重要です。給与明細には、以下の情報を記載しましょう。
基本給・時間外手当・控除額(税金・社会保険料など)
最終的な支給額(手取り額)
振込日・振込先の銀行情報

給与明細がないと、技能実習生は給与の詳細を把握できず、不安や誤解を招く可能性があります。特に外国人労働者にとっては、日本の給与体系が複雑なため、しっかり説明を行うことが重要です。


4. まとめ:適正な給与管理が企業の信頼につながる

技能実習生の給与管理は、企業にとって重要な責務です。適正な給与を支払い、法令を遵守することで、企業の信頼性を高め、安定した労働環境を確保できます。

✅ 本記事のポイントまとめ

日本人と技能実習生の給与に大きな差をつけることはできない
給与の相場は最低賃金以上、手取り12万~16万円が一般的
給与は銀行振込が基本で、毎月決まった日に支払う
給与明細を発行し、透明性を確保する

技能実習生と日本人労働者が共に働きやすい環境を整えることが、企業の成長にもつながります。今一度、給与の適正な管理が行われているか見直してみましょう。