現在の技能実習制度に代わり、2027年6月20日(予定)に育成就労制度が施行されます。
2024年6月14日に可決された入管法・技能実習法の改正法により、技能実習制度に代わって創設されました。
技能実習制度は「学びと母国貢献」、育成就労制度は「日本での労働貢献」に重点があります。
今回はこの2つの違いを簡単にまとめます。
1. 目的
技能実習制度
発展途上国への技術移転を目的とし、外国人が日本の企業で技能を習得することで母国の発展に寄与することを目指しています。
育成就労制度
日本の人手不足を解消するため、外国人を日本で長期間就労させ、即戦力として働いてもらうことを目的としています。
2. 対象者
技能実習制度
技術や知識を学ぶ意欲のある発展途上国の若者。
育成就労制度
日本国内での中長期的な労働を希望する外国人。
3. 滞在期間
技能実習制度
原則1~5年。技能の習得が主目的のため、長期滞在は難しい。
育成就労制度
最長で10年以上の滞在が可能なケースもあり、日本での生活基盤を築ける場合があります。
4. 就労範囲
技能実習制度
事前に指定された職種・作業内容に限定され、変更が困難。
育成就労制度
比較的幅広い職種や業務に従事可能。
5. 制度の運用
技能実習制度
技能実習生の教育や生活環境の支援が重視され、実習生受け入れ機関が管理を担当。
育成就労制度
労働者としての待遇や権利が重視され、企業との直接雇用が基本。
育成就労制度の主な特徴
・3年間の育成期間を経て、特定技能1号の水準のスキルや知識を習得させる
・労働者としての権利の保護や、監理団体などの関係機関の要件を適切化
・育成就労制度後のキャリアアップの道筋を明確にする
・企業は日本語教育や技能研修などを提供し、外国人労働者の成長をサポートする
1.費用負担の増加
外国人材の居住国や企業の対応状況により費用は変動しますが、政府資料によれば、1人あたりの初期費用は約50万円以上かかる場合があります。さらに、日本語教育や進捗管理体制の構築に伴い、年間で100万円を超える追加費用が発生することも考えられます。
新たな費用負担の例
- 渡航関連費:航空券代、入国後の交通費・宿泊費 等
- 送り出し機関への費用:研修費用、手数料、書類作成費 等
- 教育支援費 :試験対策費、日本語教育費、教材費 等
労働力人口が減少している日本において、外国人材は貴重な存在です。育成就労制度では、長期就労が可能となるため、中長期的な採用コストの削減が期待できることは確かですが、育成就労制度の施行により、企業が負担する初期費用が増えることには注意が必要です。
初期費用の面では、制度施行前に技能実習生の受け入れをされることをおすすめします。
2.受け入れ可能な職種の制限
在留資格技能実習から特定技能に移行するためには、特定技能制度の受け入れ対象分野である「特定産業分野」と、分野・職種が一致している必要がありますが技能実習制度の移行対象職種・作業全90職種のうち、特定産業分野と一致していないものは29職種ありました。育成就労制度の受け入れ対象分野・職種は、特定産業分野と原則一致する予定です。
対象とする業種・職種分野が大きく狭まる点は留意しましょう。
育成就労制度の対象となる業種
- 介護
- ビルクリーニング
- 素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業
- 建設
- 造船・舶用工業
- 自動車整備
- 航空
- 宿泊
- 農業
- 漁業
- 飲食料品製造業
- 外食業
3.転籍のリスク
育成就労制度は、技能実習制度を改善した制度で、外国人材の人権確保を目的として転籍を可能にしています。転籍のリスクを軽減するには、対策が必要になる点にも注意が必要です。
転籍のリスクへの対策
- 外国人材から選ばれる職場づくりに努める
- 外国人の視点に立った労働環境を整える
- 転籍前の受入れ機関が負担した初期費用等について、転籍先の企業が適切な補償を行う制度を導入する
- 過度の引き抜き防止のための取組を促進する 等
4.不法就労助長罪の厳罰化
育成就労制度の導入に伴い、不法就労助長罪の罰則がより厳しくなりました。2024年6月14日に成立した入管難民法の改正により、不法就労助長罪の罰則が改定されています。
不法就労助長罪の罰則
- 懲役3年以下から5年以下
- 罰金300万円以下から500万円以下
5.教育や研修の充実が必要
育成就労制度では、外国人材の日本語教育支援が企業の新たな義務となる予定であるため、この支援において負担が発生する可能性があります。
日本語教育支援による負担
- 学習環境の整備にかかる費用
- 進捗管理と評価にかかる費用
- 学習時間の確保にかかる費用 等
記載したすべての情報は、現時点で確定したものではありませんので、ご注意ください。
育成就労制度の導入により、メリットもデメリットもありますが、企業側、特に中小企業にとっては、経営に直結する深刻な問題です。費用面を考慮し、お早めに技能実習生の受け入れを行いませんか?