現在、多くの産業が特定技能や外国人技能実習生を受け入れています。
異文化コミュニケーションについて把握し、今後の受け入れに役立てたい方も多いのではないでしょうか。
今回は、異文化コミュニケーションの概要や失敗しやすいポイント、外国人との異文化コミュニケーションで必要なこと、大切なことなどをコラムにしようと思います。
特定技能や技能実習生の受け入れを検討している、またはすでに受け入れている企業の人事担当の方もぜひ参考にしてください。
異文化コミュニケーションとは
そもそも異文化コミュニケーションとは、出身国や年齢、性別など、自身と異なる価値観やバックグラウンドを持つ相手と交流することを指します。
異文化コミュニケーションにおいては、相手との摩擦や衝突を恐れることなく信頼関係を築くことが大切です。
特に、日本とほかの国には日常生活や仕事上で異なる文化・マナーが多くあります。
異文化コミュニケーションのスキルを習得すれば、円滑な交流が可能となるでしょう。
また、異文化コミュニケーションでは英語をはじめとした言語スキルだけでははく、コミュニケーションをとる上でのマインドやスキルも大切です。
異文化コミュニケーションのスキルが重要な理由
異文化コミュニケーションのスキルが重要な理由としては、社会のグローバル化が進むなか、様々な形で日本で働く外国人が増えていることが挙げられます。
出入国在留管理庁の発表によると、2023年10月時点の外国人労働者数は200万人超で、届出が義務化された2007年以降では過去最多の人数とされています。
外国人労働者の国籍で最も多いのは51万8,364人(25.3%)のベトナム人で、次いで多いのが39万7,918人(19.4%)の中国人です。
このデータが示すように、日本で就労する外国人は増え続けており、各企業で異文化コミュニケーションのスキルを習得する必要性が高まっています。
異文化コミュニケーションで失敗しやすいポイント
外国人との異文化コミュニケーションで失敗しやすいポイントを3つ紹介します。
事前に失敗しやすいポイントを把握しておけば、外国人と仕事をする際にスムーズにコミュニケーションをとりやすくなると思います。
あいまいな表現や指示を行う
日本人の従業員に対しては、あいまいな表現や指示でも伝わるケースはありますが、元々異なる言語を扱う外国人には伝わらない可能性が高いため注意が必要です。
例えば、「大丈夫です」「いいです」といった日本語を使うと、外国人には「YES」と「NO」のどちらの意味で発した言葉か伝わりづらいです。
また、明確なルール決めや期日の設定などをしないまま仕事の指示を出すと、相手を混乱させてしまうかもしれません。
そのため、外国人技能実習生などに仕事を依頼する場合は、社内で共有しているルールに基づいて依頼し、具体的な期日などを設定することが重要となります。
明確なルール決めや仕事の期日の設定などは、日本人社員の仕事の効率化につながるというメリットにも期待できます。
仕事の仕方の違いを把握していない
仕事に取り組む過程で、日本では俗にいうホウレンソウの「報告・連絡・相談」というポイントを押さえて仕事を進める企業が多い傾向にあります。
一方、仕事の際には基本的に自己判断で進めていくといった国もあります。
そのため、知らない間に仕事が進んでしまうことのないように、事前に認識のすり合わせをすることが大切です。
外国人に「報告・連絡・相談」に取り組んでもらいたい場合は、これらを行うタイミングを事前に教えておいたり、実践に対してフィードバックしたりするといいと思います。
また、業務において、その外国人が持つ権限の範囲を明確化することも重要となります。
人前で注意する
2020年6月1日より、職場でのパワーハラスメント対策は事業主の義務となっています。
そのため、仕事に関する適切な指導であったとしても、人前で叱責することは多くの日本の企業で徐々に減りつつあります。
とはいえ、小さなミスや遅刻であれば、その場で軽く注意する場面もあるかもしれません。
しかし、外国では人前で叱ること自体がタブーとされていたり、そうでなくともかなり強い不快感をもつ外国人も多いので注意しましょう。
異文化コミュニケーションで必要なこと・大切なこと
続いて、外国人材との異文化コミュニケーションで必要なことや大切なことを説明します。
コミュニケーションスタイルが異なる前提で接する
そもそもコミュニケーションスタイルの違いとして、日本では抽象的なメッセージを、受取った側が推測する「ハイコンテクスト文化」が根付いています。
一方アメリカなどでは、メッセージが具体的で、受け取る側が言葉の意味を推測する必要性が少ない「ローコンテクスト文化」が一般的となります。
空気を読んだ行動や言動などは、外国人には馴染みのないコミュニケーションスタイルである可能性もあることを認識して、外国人へ明確に伝わるような言葉を使うことが大切です。
例えば、社内の複数人が関わるプロジェクトで外国人に仕事を依頼する場合は、担当してもらいたい仕事内容を明確に伝えるようにしましょう。
非言語的コミュニケーションのマナーを把握する
日本では特に問題のない身ぶりでも国によってはマナー違反となるケースもあります。例えば、日本では笑うときや食事中に行われる「口に手を当てるしぐさ」は、国によっては何かを隠す、あるいは相手を拒否するジェスチャーとして受け取られてしまう可能性があります。
また、人混みをすり抜ける場面などで使う「手刀のしぐさ」についても注意が必要です。国によっては威嚇や挑発のジェスチャーとして受け取られかねません。
このように、非言語的コミュニケーションのマナーが、日本と外国で異なることを把握したうえで接するようにしましょう。
時間に対する感覚が異なることを理解する
日本人と外国人との、時間を守ることに対する意識や感覚の違いについても理解しておく必要があります。
国民性によっては遅刻に対するとらえ方や考え方が全く異なる可能性があります。
たとえ外国人技能実習生が遅刻をして反省の色が見られなかったとしても、頭ごなしに強く注意するのは得策とは言えません。
特に、人前で叱るなどの行為に対して強い不快感を持つ国もあります。
相手の文化背景などに理解を示しつつ、再発防止策をしっかりと検討して、根気強く徐々にすり合わせることが大切です。
価値観が異なることを理解する
国の文化によっては、仕事よりも家族などのプライベートを重視します。
日本とは価値観が異なることを理解したうえで、接することが重要となります。
とはいえ、それぞれの国における国民性などはあくまで一つの傾向にすぎません。
受入企業は、外国人技能実習生の能力・スキルを踏まえて、適切なプランを立てたり、明確な評価基準を設けたりとモチベーションアップに向けた取り組みをすることも大切です。
差別的な言動をしないようにする
悪気がなくとも、差別的であると相手が判断する言動や行動をしないように注意しなければいけません。
まずは、経営陣や人事担当者が外国人技能実習生受け入れに関するコンプライアンスをしっかりと理解しておき、職場関係者にも浸透させるといいでしょう。
外国人材の受け入れに向けて、研修を受けるのも手段の一つです。
ロールプレイングを行ったり、外国人材に関する情報を共有したりすると、スムーズな異文化コミュニケーションを図りやすくなります。
外国人技能実習生などとの異文化コミュニケーションをスムーズに行うコツ
ここからは、外国人材との異文化コミュニケーションをスムーズに行ううえで、重要なコツを紹介します。
日本の文化・価値観を押し付けない
日本特有の文化・価値観を外国人に押し付けないようにすることが大切です。
例えば、日本企業で働く外国人は以下のような点に疑問を抱きやすいようです。
・質問に対する回答がストレートではなく遠回しである
・古いルールが惰性的に適用されている
・自分の役割以外の仕事を振られる
外国人技能実習生から疑問や質問を受けた際には、企業側も改善の余地を探るなど、お互いが歩み寄るようにすることが重要です
外国人が働きやすい環境へと整備すれば、業務効率化に繋がったり、ワークライフバランスの取れた職場環境へと改善できたりする可能性もあります。
日本語の習得度に合わせたコミュニケーションを図る
日本で働く外国人は一定レベルの日本語能力を身につけているとはいえ、その習得度には個人差があります。
特に、来日して間もない外国人技能実習生などと接する場合は、以下のような点を意識しましょう。
・ゆっくりはっきりと話す
・簡単に短く話す
・意味が伝わらないときは類似の言葉や表現に置き換える
・「えー」「まあ」などの意味のない言葉は避ける
・方言や地域特有の言葉は避けて話す
必要に応じて笑顔で話したり、動作や手振りを交えて話したりすれば、より円滑なコミュニケーションが可能になります。
外国人技能実習生を受け入れる際には、「コミュニケーションスタイルが異なる前提で接する」「差別的な言動をしないようにする」といったポイントをおさえておくことが大切です。
また、円滑な異文化コミュニケーションのために、相手の日本語の習得度に合わせてコミュニケーションを図っていくといいでしょう。