外国人技能実習生と特定技能制度の違い

現在、日本で外国人が就労することが出来る在留資格として代表的なものに高度専門職、技術・人文知識・国際業務、技能実習、特定技能、留学生などがあります。

今回はその中でも名前も、制度も少し似ている技能実習と特定技能に焦点を当て、その違いなどを掘り下げて行きたいと思います。

外国人技能実習制度

外国人技能実習制度は、日本企業が外国人に対して技能を教育・習得させることを目的としています。基本的に日本に存在するほとんどの職業でこの制度を利用することが可能なのですが、農業や製造業、建築関係などの指定された90職種165作業(令和5年10月31日時点)以外の職業では1年間のみの在留資格となっており、基本的に技能実習という言葉を使う場合2年3年(最大5年)と延長し日本で労働することが出来る、上記の90職種165作業のことを指すことが多いです。

主に新興国や途上国からの若者が対象であり、一定期間の実習を通じて技能を身につけ、帰国後に母国でその技能を活かすことが期待されています。しかし、現実問題として実習生が制度上認められていない単純作業の労働力として使われることも多々あり、労働条件や保護に関する問題が指摘されています。

受入対象: 主に開発途上国から技能を学び、帰国後にその国の発展に寄与することを目的とした若年労働者を対象としています。

期間: 1年から最大5年までの研修期間が設けられています。

給与: 通常の労働者と同様に、適正な賃金が支給されることが求められます。

実習先: 主に中小企業や農林水産業などでの技能習得が目的とされています。

特定技能制度

特定技能制度は、特定の産業において(12分野14業種)日本国内で必要な技能を持つ外国人労働者を受け入れることを目的としています。介護、農業、建設、宿泊業など、労働力不足が深刻な分野に焦点を当てており、技能を持つ外国人に対して長期的な在留が可能です。最長で10年間の在留が認められており、労働市場における安定した供給が期待されています。

こちらは技能実習制度と違い労働者を受け入れるということを目的としていますので一度在留資格を取得すると機関内に同一業種であれば基本的に本人の意志と労働先があればいつでも転職出来るという違いがあります。

受入対象: 技能を持つ外国人労働者が対象で、技能の習得と実務経験を目的とします。

期間: 最初の在留期間が最大5年、更新して最長10年間まで在留が可能です。

給与: 通常の労働者と同様に、適正な賃金が支給されることが求められます。

実習先: 中小企業から大企業まで広く、需要の高い分野での技能労働者として活躍します。

それぞれのメリット・デメリット

技能実習のメリット

期間内の労働力確保:基本的に本人の意志のみで転職することは難しいため一度働き始めると一定期間の労働力は確保出来る
教育と研修の機会:技能の習得と共に、日本の企業文化や技術を学ぶ機会を提供できる。
国際貢献:帰国後に技能を活かし、現地での経済発展に寄与することが期待される。


特定技能のメリット

需要分野の労働力確保:特定の産業で技術力の高い労働者を効率的に確保できる。
長期的な雇用の安定化:最大10年の在留期間が可能であり、安定した人材確保が見込める。
法的な安全性:労働条件の法的保護があり、違法労働や人権侵害を防止しやすい。

技能実習のデメリット

低賃金の懸念: 研修費が最低賃金以下に設定される場合があり、労働条件の不安定性がある。(現在はこのようなことはほとんど無い)
労働環境の問題: 過重労働や労働基準法の違反が報告されており、労働者の保護が課題となっている。


特定技能のデメリット

日本人労働者との競争: 特定技能の受入により、日本人労働者の雇用に影響を与える可能性がある。
技能の不足: 特定分野での技能不足を補う一方で、技術移転や日本国内の技能育成への影響が議論されている。

転職の可能性:同一業種であれば本人の意志のみで転職が可能となり受け入れ費用だけ支払って労働力の安定確保とならない場合もある

まとめ

技能実習と特定技能はそれぞれ異なる目的と枠組みを持ち、受入れる事業主にも異なるメリットとデメリットがあります。技能実習は研修としての性格が強く、低コストでの労働力確保が可能ですが、労働条件の安定性が課題です。一方、特定技能は需要分野での長期的な労働力確保が可能であり、適正な労働条件の確保が求められますが、日本国内の労働市場に与える影響も考慮する必要があります。どちらの制度も、適切な運用と労働者の保護強化が求められています。

しかし、育成就労制度の導入により、日本の外国人労働者受け入れの枠組みは大きく変わる可能性があります。教育・研修の充実や長期的な労働者確保の強化が期待される一方で、適切な制度運用と労働者保護の強化が今後の課題となるでしょう。これにより、日本の労働市場がより柔軟かつ効率的に運営され、経済の発展に寄与することが出来るよう私どもも頑張って行きたいと思います