新制度「育成就労制度」

「育成就労」制度を決定 「技能実習」制度は廃止

2月9日に首相官邸で行われた関係閣僚会議で、先日から有識者会議の案で出ていた、技能実習に代わる新制度「育成就労」の方針を決定されました。

これにより1993年11月1日に創設された技能実習制度はその30年の歴史に幕を下ろすことになりました。

現在技能実習という言葉をテレビや新聞などでよく耳にしますが、その殆どが悪い印象ではないでしょうか?

私達は監理団体として日々技能実習生、受入れ事業者様と関わっています。

ありがたいことに、弊組合ではどちらからも感謝の声をいただくことが多いのになぜ世間で騒がれるのは「安い労働力」「人権を顧みない奴隷制度」などといった悪い話題ばかりなのでしょうか?

そこで本日は技能実習制度の歴史を振り返ってみることにしました。

技能実習制度の歴史

1960年代:このころから日本企業の海外現地法人などの社員教育として行われていた研修制度が、今の技能実習制度の起源となったとされています。しかし当時の研修生の受け入れは、海外現地法人を持つような大企業が中心であり、現地事業所の生産性向上や、周辺の産業社会への社会貢献を目的とする受け入れが主な目的であったようで、「外国人研修制度」は日本国内の人材不足を補うという文脈で始まったものではなかったといえます。

1970年代後半~1980年代初頭:日本の経済成長に伴い、労働力不足が深刻化しました。この時期、特に製造業や建設業などで外国人労働者の需要が高まりました。しかしこの頃になっても中小企業による外国人研修生の受け入れが制度として整備されていなかったため、中小企業が現地に合弁企業を設立し、そこから派遣するような形での受け入れを行ったり、現地の送り出し機関と独自に契約を交わし、様々な問題を解決しながら研修生の受け入れを開始した。前者が、当時の制度に近い「現地法人」からの受け入れである一方、後者は現在の「団体監理型」による受け入れに近いシステムになっていたようです。

1990年代~2000年代:1986 年からの「バブル景気」の影響で労働需給が急激に増加し、中小企業で人手不足がより深刻化な問題となりました。そして、産業界からの強い要請もあり、1990 年に法務省告示により「団体監理型」の技能実習生の受け入れを認め、現在の技能実習制度が始まりました。このころの在留資格は「研修」というものであり、あくまでも労働者ではなく研修生として受入れられていたため労基関連の法対象から外れていたことをいいことに実際には他の日本人労働者と変わらない労働に従事しているにも関わらず支給されていたのは最低賃金以下の生活実費としての研修手当のみであったことが多く見受けられたようです。

2010年代:2010年に政府は技能実習生制度の改革に着手し、不正や虐待を防止するための法改正を行い、現在の在留資格である「技能実習」が創設されました。これにより実習生は労働者として仕事に従事出来るようになり技能実習生の賃金の問題はこれまでの技能実習制度内の課題から切り離され完全に労働基準法によって守られることとなりました。また2019年には、新たな外国人労働者受け入れ制度である「特定技能」制度が導入されました。これにより、技能実習生制度と特定技能制度が併存する形となりました。特定技能制度では、一定の技能を持つ外国人労働者に、一定期間の雇用を提供することが可能となりました。

2020年代:2017年に外国人技能実習機構が設立され今では昔のように技能実習生が安い労働力として扱われるようなことは少なくなったように思います。実習生の権利は以前に比べ格段に確保されるようになったにも関わらず増え続けている失踪者のことなど、様々な問題を抱え今さらに制度改革を行われようとしています。技能実習生制度は育成就労制度へと改正され、今後は技術継承のみならず日本の労働力不足や国際協力の一環として、今後も進化し続けるでしょう。

あとがき

制度改正が行われるにあたり、歴史を振り返ってみましたがいかがでしたでしょうか?

需要と供給があり始まった制度ですが法律というのはあくまで人が作ったものであり、それをどう使うかはそれぞれの責任によるところが多いものだなと感じました。

私達は新しい制度が施行された際にはしっかりと制度を理解し、受入れ企業、実習生(今後は就労生となるのかな?)がお互いにwin-winとなるよう努めてまいりたいと思います。

次回は現在分かっている新制度についての変更点をまとめていきたいと思います。